「カリスマ社長の大失敗」は歴史に名を残す起業家や、現代のカリスマ経営者たちの失敗と復活への道などを集めたエピソード集だ。起業家や経営者の研究をライフワークとし、多くの経営者を取材している著者・國貞文隆氏に、失敗を糧に成功へ向かった経営者に共通する資質などを聞いた。
「会社がつまらない」「プライドが高い」「考えているだけでなかなか実行に移さない」「まだ本気を出していないだけだと思っている」「何をしたい、どうなりたいのかわからない」などなど、一見ネガティブな要素を持っている人ほど成功する可能性が高いと、國貞氏は著書の冒頭で語っている。どういうことなのだろうか…。
どこか抜けている人ほど大成する?
・楽天的
・ストイック
國貞氏が考える成功する経営者の資質は、突き詰めていくと上記の2つにいきつくように思う。一見真逆のようだが、経営者の共通項を語る上ではキーとなる要素なのだ。
取材した経営者は揃って、決定的にまずい状況であってもどこか楽天的なのだという。ピンチをどう抜け出すか、どう好転させるかを考える姿勢がどの経営者にもあった。「成功した人は、絶対にマイナスなことを口にしません。取材時にマイナス要因を話してもらおうと誘導しても、必ずポジティブな表現で答えます」。物ごとを見る視点を常にポジティブにおいているということだろう。事実、「ポジティブシンキングのご本家ともいえる中村天風の著書『成功の実現』は、経営者のバイブルで多くのカリスマ経営者が読んでいます」という。
楽天的な考え方とは別に、楽天的に見えることも重要だ。「俗に『切れモノ』と呼ばれる人が経営者になるよりも、少しばかり抜けていると周囲が思う人のほうが経営者になっているケースが多いです。経営者が失敗を経験した時、必ずといっていいほど救いの手が差し伸べられています。計算している人もいれば、計算でない人もいると思いますが、『支えてあげなければ』と周囲に思わせる雰囲気を醸し出しているんです」
立場が人を作る
経営者は俳優と同じだと國貞氏は言う。「経営者は『朝の時間を大切にする』といわれます。これは会社に着いたと同時に経営者として振る舞える準備を朝の時間に行っているからです。経営者の業務は意志決定を始めとしてアウトプットがほとんどです。パフォーマンスを上げるためにも、情報のインプットや整理は事前に行う必要があります。経営者は部下に悩みを打ち明けることはできないですから、基本一人で考える時間を持ちます。誰もいないところで、ポジティブに考えるには朝が適しているんです。『支えたい』雰囲気が必要とはいえ、迷いのある経営者に部下はついてきません」
「ぶれないこと」は経営者が持つべき資質なのだという。「一度判断を下せば、突き進む意志が必要です。経営者は人とは違う方向を選ぶ傾向があります。選んだ瞬間から下した判断に不安を頂くといいますが、ドラッガ―も説いているようにやり遂げる力が成功には不可欠でしょう。責任感ともいえると思います」
この責任感は必ずしも全ての人が生まれながら持っているものではなく、あくまでも後天的なものだ。「私は立場が人を作ると思っています。経営者が皆、生来責任感ややり遂げる力を持っているのではなく、判断する立場になって生まれてくるものです」
判断に迷わない工夫として多くの経営者が行っていることが「夜に考え事をしない」ことなのだという。意外なことかもしれないが、夜に考え事を始めると際限なく考えてしまい、眠れなくなって寝不足になってしまう。結果判断力が鈍るというのだ。なるほど、経営者が睡眠時間を重要視する話もよく耳にする。