撮影は極寒の中で行われ「熱が2回も出ましたが、若さで乗り切りました」と笑う。「共演の前田吟さんとは健康について話したり、釈由美子さんからはインフルエンザ予防の飴を頂いたりしました」と、現場での体調管理は大変だったようだ。
台本を読んだ時点で「女の子の成長がはっきりと見えていました。『ひとりでできないこともみんなでやれば大きなものになる』というメッセージもはっきりしていて、ストレートに『素敵な話だな』と思いました」指揮者の役ながら音楽経験はなし。プロについて4日間、みっちり指揮の練習をした。「指揮者も表現者なんだと感じました。オーケストラのメンバーに指示を出すにも、『この人たちにどうしてほしいのか』を考え、手のひら・指の先まで思いを乗せて伝えなければ伝わりません」
実際にオーケストラを前に指揮棒を振るうち「みんながどんどん一つになっていくのを感じました」という。プライベートでは「中心になって何かを行うタイプではない」そうで、今回の役から学ぶことが多かったという「劇中で共演者から『自分の思いを伝えたければ、相手のことを思いやれ』と言われるんですが、一方通行では思いは伝わらないと心底思いました」。映画を観てくれる人にも気付いてほしいという。
演じた美咲と自分で重なる部分はあるかとの問いには「美咲は志賀町に来るまで自分と向き合わず、本来の自分とは違う方向にいってしまっていた気がしますが、志賀町の人々に触れて、気づかされ、受け入れていく素直さがありました。素直なところは共通していると思います。でも、私はひとりでいる時間が多いのでよく自分と向き合っていますね。最近では芝居に対する気持ちをじっくり考えていました。悩みが増えることは自分が変化している表れだと思うようにしています」
ベテラン陣に囲まれた今回、「周囲を引っ張り、存在感を示す、自分の居場所をつくるために周りを見る心の余裕が必要だと感じました」という。
「ひとりではできないが、みんなとならできる」。しかし、それは受け身であっては成し得ないことだろう。相手を思い、自分の思いを伝えれば事は起こり、困難も乗り越えられる。シンプルだが強いメッセージが映画から伝わってくる。「何かにつまずいている人に勇気や希望を与えられる映画になったと思います」と有村は言う。
「これから役者としての成長に行き詰まりを感じることもあると思うんですが、自ら動いて、いろいろ吸収して『やるしかない』ですよね」
2週間という決して長くはない撮影期間に、主人公・美咲に勝るとも劣らない“成長”を遂げたようだ。